dbt coreとVS CodeとDuckDBで始めるデータモデリング環境構築ガイド(準備編)

こんにちは、六本木アナリティクスエンジニアのTaku(@aelabdata )です。

dbt入門の第2回です。前回はdbtについて説明しましたが、今回から2回に分けて、データモデリング環境構築について解説します。

データ分析の常識を変えるdbt入門:信頼性とスピードを両立する新時代のツール

今回は、環境構築を解説する2部構成の第1回目(理論・準備編)です。なぜ、dbt CoreDuckDBVisual Studio Code (VS Code)という3つのツールを選ぶのかという背景と、環境構築に必要なツールの準備について解説します。第2回(実践編)では、今回準備したツールを使い、実際に手を動かして環境を構築する具体的な手順を解説しますので、ご期待ください。

dbt Core・DuckDB・VS Codeを選ぶ理由

dbt CoreDuckDBVS Codeの組み合わせがなぜ最適なのか、そのメリットを以下に示します。

  • dbt Core: dbtの全ての機能を無料で利用できるオープンソースのCLIツールです。dbt CloudのようなSaaSプラットフォームと比較しても遜色ない開発体験を手に入れることができます。
  • DuckDB: サーバーのセットアップが一切不要な、ファイルベースの高速な分析用データベースです。ローカル環境で驚くほど軽快に動作し、データ分析タスクに非常に適しています。
  • VS Code: 多くの開発者にとって馴染み深く、強力な拡張機能を持つコードエディタです。適切に設定することで、有料プラットフォームに匹敵する開発環境を構築できます。

この環境の最大の魅力は、すべてがあなたのローカルマシン上で完結し、完全に無料で利用できる点です。クラウドサービスのコストを気にすることなく、データモデリングを試行錯誤できます。これにより、データモデリングのサイクルを高速に回し、失敗から学ぶという最も効果的な学習が可能になります。

それでは、理想の開発環境を構築するための最初のステップ、「前提条件」の確認から始めましょう。

前提条件:環境構築を始める前に

本格的なセットアップを始める前に、いくつかの一般的な開発ツールがインストールされている必要があります。以下のリストを確認し、もしインストールされていないものがあれば、事前に準備しておきましょう。

  • Python (3.8以降): dbt CoreはPython製のCLIツールであり、その実行にはPythonが不可欠です。本ガイドでは、Pythonの仮想環境(venvなど)の利用を強く推奨します。これにより、プロジェクトごとにdbtや関連パッケージのバージョンを独立して管理でき、依存関係の衝突を防ぎます。
  •  Git: dbtプロジェクトは本質的にソフトウェアプロジェクトであり、そのコードは当初からバージョン管理されることを前提に設計されています。Gitを使うことで、変更履歴の追跡やチームでの共同作業が可能になります。
  • Visual Studio Code (VS Code): 本ガイドで利用するコードエディタです。単なるテキスト編集機能にとどまらず、この後紹介する強力な拡張機能と組み合わせることで、dbt開発の生産性を飛躍的に向上させます。

これらのツールがすべて揃っていれば、準備は万端です。次のセクションから、具体的な環境設定のステップへと進んでいきましょう。

VS Codeと拡張機能のセットアップ

dbt Coreはコマンドラインツールですが、開発の効率を飛躍的に向上させるためには、コードエディタの環境設定が極めて重要です。適切な拡張機能を導入することで、VS Codeをdbt Cloudにも劣らない強力な開発ツールに変えることができます。ここでは、dbt開発に必須とも言える拡張機能を紹介します。

dbt Power User

これはdbtのローカル開発において最も重要な拡張機能です。クエリ結果のプレビュー、モデル定義へのジャンプ、コードのオートコンプリートなど、dbt開発をシームレスに行うための機能を提供します。これがあるだけで、開発体験が劇的に向上します。

Python

dbt CoreはPython環境で動作します。この拡張機能は、後ほど作成する仮想環境をVS Codeが正しく認識し、管理するために必要となります。

SQLFluff

SQLのリンター(構文チェッカー)およびフォーマッターです。チームでコーディング規約を統一し、コードの品質を維持するために役立ちます。.sqlfluffという設定ファイルにルールを記述することで、dbtのJinja構文を含むSQLを自動で整形してくれます。

これらの拡張機能を導入することで、コード編集からモデルの実行、結果の確認までの一連のサイクルをVS Code内で完結できるようになります。理論とツールの準備は整いました。次回は、これらのツールを使って実際に環境を構築していきます。

まとめと次のステップ

本記事では、dbtのローカル開発環境を構築するための理論的な背景と準備について解説しました。

dbt coreDuckDB、そしてVS Codeを組み合わせることで、なぜコストを抑えつつもdbt Cloudに匹敵する、高速で拡張性の高い開発環境が実現できるのかをご理解いただけたかと思います。また、必要なソフトウェアのインストールとVS Codeの拡張機能設定という、実践に向けた準備も完了しました。

次回のブログ記事(実践編)では、いよいよ手を動かし、以下の具体的な手順に沿ってあなただけのデータモデリング環境を構築していきます。

  • GitHubでリポジトリを作成し、ローカルにクローンする
  • Pythonの仮想環境を構築し、dbt-coredbt-duckdbをインストールする
  • dbt initコマンドでdbtプロジェクトを作成する
  • profiles.ymlファイルを作成し、DuckDBへの接続設定を記述する
  • dbt runを実行し、モデルがDuckDB上で構築されることを確認する
  • 変更内容をコミットし、GitHubへプッシュしてPull Requestを作成する

理論は完了です。次回は、一緒に手を動かし、コマンド一つひとつを確認しながら、あなただけの強力なデータモデリング環境を完成させましょう!